コラム

「本物の学力」とは

2020年の学習指導要領改訂を目前にひかえ、今、学校教育は大きな変化をむかえようとしています。そして、子どもたちはその激動の真っ只中に自分の足で立ち、自分の力で進んでいかなくてはなりません。
これまでの「勉強」というイメージは、「何を学ぶか」「何ができるように(分かるように)なるか」という視点が中心でした。しかし、これからは「どのように学ぶか」「身に付けた力をどのように活用するか」「目の前にある課題をクリアするには、これまで身に付けたどんな知識や技能を、どのように用いればよいか」ということが自分で判断し、実行できる力が求められています。当然、入試改革も行われますので、これまでのようにただ単に正答を記述し高得点さえ取れば合格できる、という単純な入試ではなくなってきます。
そんな時代に必要とされる学力とは…。こちらでは、長く現職教員として大勢の子どもたちと関わってきた経験から、今後必要とされる学力を身に付けるためにどうしていったらよいかについて書かせていただきます。悩んでいる親御さんやお子さんのヒントになれば幸いです。

21世紀型スキル

近年、AI(人工知能)の急速な進歩もあり、現在の小学生が成人する頃には、現在ある職業の7割以上がAI等が代替して行えるようになるため、人間がその職業に就くことはなくなり、その代わりに今は存在しない職業が7割以上を占める、と考えられています。
子どもたちにとって、まさに「激動の時代」となります。変化することが当たり前の時代を生きていく子どもたちに必要なのはどのような力なのでしょうか?
東京大学大学院情報学環教授の山内氏は、2016年10月20日付の朝日新聞で以下のように語っています。

『変化することが当たり前の時代を生きる子どもたちには、学校教育で「21世紀型スキル」を身に付けさせる必要があると思います。課題解決力や批判的思考力、コミュニケーション能力、コラボレーション(協力する)力は、あらゆる職種で必要とされる核となるスキルです。創造性や情報リテラシー(読み解く力)、異文化適応能力も欠かせません。【中略】今後は、大学卒業後も自己投資のために学び続けることを考えなければなりません。』

ただ「覚えた」だけではなく、その「覚えたこと」を適切に組み合わせたり活用したりできる力が求められています。つまり、「学び方の学習」が大事になってきます。
当塾では、「学び方の学習」を大切にして指導していきます。

思考力・判断力・表現力~その①~

現代の教育を語る上でのキーワードともいえるのが、この「思考力・判断力・表現力」です。
まず、思考力とはどんな力なのでしょうか。
思考力とは、読んで字のごとく、自分で思い考える力です。「10×10=100」という計算を例に挙げてみましょう。「10×10=100」と正しく計算できることは、計算の技能、つまり計算力が身に付いていることになります。
しかし、思考力というのは「10×10が100になる」と正しく計算できるだけではなく、その計算の意味まで考え、これまでの学習や次の学習につなぐことができる力です。思考力が身に付いている子は、次のように考えることができます。
「10×10というのはかけ算だな。かけ算というのはもとにする数量を何倍つまりいくつ分にするのかという意味だから、10×10は10が10個分あるということだな。10円玉で考えると、10円玉が10枚あるということだな。だから10×10は100になるんだ。そうすると、20×10は、20が10個分あるということ、100×10は100が10個分あるということになるな。そうか、×10というのは、○○が10個分ということなんだ」
このように、思考力が身に付いている子は、既習の学習内容を整理しながら目の前の課題を解決し、そして次の学習へと考えを広げていくことができます。小学生のうちからこうした力を身に付けておくことにより、学年が進んで学習内容や学習量が増えても自分で考えて勉強することできるようになります。

思考力・判断力・表現力~その②~

先日、当教室の塾生さんが学校で行われた算数の単元テストの結果を持って来られました。当教室でじっくり復習に取り組んだこともあり、テストはほぼ満点で、本人もとてもうれしそうでした。
その中に、直接採点対象とはならなかったのですが、活用問題が設定されていました。ぱっと見、全国学力学習状況調査のB問題のような感じでした。塾生さんは「この問題、なんだかよく分からなかったんだよね」と言うので、一緒に解いてみました。
どんな問題だったかというと、2人の子どもが、一定のルールにそって定期的に貯金した結果、現在貯金箱にはいくら貯まっているかを答える問題でした。そこには、1回あたりの一人の貯金額や貯金箱の形・重さ、貯める硬貨の形状や重さ等、ありとあらゆる情報が記載されており、その中から問われている問題に必要な条件を選んで答えを導き出す、という問題でした。つまり、単に硬貨の重さから合計金額を求めたり、貯金箱の体積から内容量を求めたりする、といった単純な問いではないのです。こうした出題傾向が今後の入試にも取り入れられると考えられています。
では、これからを生きる子どもたちに必要とされているのはどんな学力なのか?それは、このようにたくさんの情報の中から、今解決すべき課題に対して必要な情報はどれなのかを取捨選択し、正しく使いこなす、という「判断力」なのです。的確な判断力は、ただ単に入試をクリアするだけではなく、情報過多の現代社会を生きていくうえでも重要な力となります。

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